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トニー滝谷


よかった。
期待してなかったせいだけではないと思う。
村上春樹の短編の映画化。

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『トニー滝谷の本当の名前は、本当にトニー滝谷だった。』
西島秀俊の、体温の低い淡々とした語り。

左から右へ。
ページを繰るようにゆっくりめくられるカメラワーク。

主役二人の存在感。

この短編て、こんなに「くる」作品だったんだと、映画を見て思った。
そして、また原作を読み直しました。

演者がナレーションの一部を朗読する「違和感」。
春樹作品の中でいつも感じる現実への「違和感」を彷彿させた。

村上春樹作品独特の静謐と透明感、浮遊感。
非現実感というより、現実が形を変えた、歪んだ現実感。
=再構築され、はみ出した現実感。
 =孤独。
世界観がさらりと体現されていて、びっくりし、うれしくなった。

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メイキング・ドキュメンタリー「晴れた家」も見ました。

この映画、実験的な試みが実はいくつも挿入させていて、とても刺激的でした。
けど、何よりも刺激されたのが、その実験性がすべて
「村上作品の体現」のためのツールに過ぎなかったという、
そのアプローチがとても刺激的。
市川監督はすごい監督だと思い知りました。

敬意だけに終わっていないところが、とてもうれしかったです。

そして孤独で幸福で渇いていて、とても切なかったです。
by miyua-moi | 2008-10-23 02:34 | film
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